ペンに指先が触れる寸前だった。


身を屈めた隆二がそれを手にしたのだ。


「ペン、落ちたぞ」


隆二が夕子へ向けて言う。


それらがすべてスローモーションのように見えた。


ペンを持った隆二が動きを止め、空中に視線を投げ出す。


その間ほんの数秒だっただろうか、次の瞬間隆二はあたしを見て目を見開いていた。


え、なに……?


「このペンは一体……」


隆二が呟き、夕子がキョロキョロと周囲を見回した。