「人を殴る時にはね、ちゃんと急所を狙わないとダメなんだよ?」


夕子は楽しげな口調でそう言い、あたしのスカートのポケットへ手を突っ込んだ。


「やめて!」


必死にスカートを抑えて抵抗するが、夕子の力には叶わなかった。


「なにこれ」


夕子の手に握られていたのはうそつきペンだ。


メモ帳じゃなかったことにホッと息を吐きだす。


「ただのペンじゃん。隠す必要なんてない……」


最後まで言い終える前に、夕子が目を見開いて静止した。


きっと、あたしも同じだったと思う。