こんな風になるはずじゃなかった。


ツグミに降りかかって来るなんて思いもしなかった。


授業内容なんて全く頭に入って来ず、あたしは何度も重たいため息を吐き出していた。


チャイムが鳴って先生が出て行っても授業が終わった事にすら気が付かなかった。


「ごめんねアユリ。怒ってる?」


休憩時間に入り、夕子がそう声をかけてきた。


表面上は申し訳なさそうな顔をしているけれど、これが本心とは思えなかった。


あたしは夕子から視線を外して返事もしなかった。


「そんなに怒らないでよ。あたしだって怖かったんだからさぁ。あの男、何して来るかわかんなかったしさ」


夕子の言葉にあたしはよくやく顔を上げた。