ヒロイン失格者達のお茶会




でも自分は自分で、人は人。


ヒロインに憧れる気持ちは少なからずあるけれど、今の生活に幸せがないわけじゃない。


今の自分を少しずつ良くしていって、自分なりの幸せを掴めばそれこそが幸せになるとちゃんと知っている。



「まあ私達みたいなのがいるから、しっかりとしたヒロインが誕生するんだから逆に褒めてほしいね」


「それは言えています。少しくらい報酬が出てもおかしくないです」


「もう少しビシバシ鍛えてやらなきゃ、今後の困難も一人で乗り越えられないダメヒロインになんかさせないわよ」


「……わたし達がしっかりしなくちゃね」



4人揃って強く一つ頷くと、茨丘の鐘が16時を知らせる鐘が鳴る。


ここの屋敷の時間軸は人間界とは違い少しだけ時が進むのが早いのもあるが、ついつい話し込むと時間を忘れてしまう。


この屋敷ももう少しで人間を寄せ付けないよう、魔物達が姿を表す時間になる。



「さて、お開きとしましょうか」


「ええ、そうしましょう。もう少しで迎えが来るはずですし」


「なんだかんだ言って、愛されてるじゃないイザベラ」


「そういうあなたも、でしょう?」



イザベラがそう言うと、エリカの顔はみるみるうちに赤く染まる。


分かりやすい人で、とても可愛らしいと素直に思う。



「べ、別に愛されてなんかな、ないわよ?」


「……わたしもワトソンが来る」


「あれ、あのワイバーンの翼もうよくなったの?」


「……うん、ダージリオンからもらったポーションのお陰で」



イザベラは側近のお迎えが。


エリカは付き添いの執事のお迎えが。


動物との会話を可能とするキーナは、ワイバーンというドラゴンのお迎えが。


それぞれ別の形の小さな幸せを、ちゃんと持っている。