みんなの幸せが見れたせいか、私までもなんだか心がほっこりする。
けど、少しだけ足りない。
……そんなことを考えたその時、黒い風が上から吹き付けてきた。
はっと思って目を凝らせば、見慣れた姿がそこにいる。
「ダージリオン」
そう名前を呼ばれて声をかけた主ーー魔王様へと駆け寄った。
「迎えが遅くなってすまなかったな」
「いいえ。来てくれてすごく嬉しいです」
そっと差し出された魔王様の手に、少し困惑しながら自分の手を差し出した。
するとそのままぐいっと手を引かれて、魔王様の胸の中に飛び込む形になってしまう。
「ま、魔王様?」
「今日は何だかくっつきたい気分でな」
「そうなんですか?」
「そういうお前も物欲しそうな顔をして、待っていたくせに」
どうやらこの人には全てお見通しのようだ。
自分で今度は魔王様に抱きつきながら、踵を上げそっと魔王様の頬にキスをした。



