「私、留学しようと思うの。」

「は?」

予想通りの反応だった。

「おい、嘘だろ。会えなくなるじゃんか。」

「ホントだよ。私、冗談言わないもん。」

翔輝は呆然としている。

「ごめんね、私の夢を叶えるためだから。」

そう言うと涙が出てきた。

なんでなの。

泣きたい訳じゃないのに。

嫌だ、止まって。

「ご、ごめんね。泣きたい訳じゃないの。」

浴衣に涙が垂れる。

こんな楽しいお祭りで泣きたくない。

すると、翔輝が抱きしめてきた。

「いいよ、泣いて。」

ホントにそれだけ。

翔輝だって辛いはずなのにな。

涙腺が緩んでしまい、大泣きした。

そうか、私が一番辛かったんだ。

今日は甘えることにした。

夜空には満開の花火が咲いている。

悔しいぐらいに綺麗だった。