「巽?」


叩かれた頭に手をやって見上げると、巽は不服そうな顔で俺を見下ろしていた。


「ばーか」


「え、なに」


「ばーか」


「巽?」


何故か「ばか」を連呼した巽は、ふいっと視線を逸らしてそのまま教室を出て行ってしまった。


……なんだ?


「あ。あいつのこと咲雪に言うの忘れてた」


不審がる俺の視線を背中に受けながら、巽は何かをつぶやいたようだった。