「ち、違っ、違うよ、好きなんて! あたしが好きなのは先輩だけだもん!」
「それもまた問題アリだけどね。ま、いいよ、それならそっちのほうがまだマシ」

思わず大きな声で否定したあたしに、
静かに、溜息を吐くような奈々の声。

「マシ? 奈々は先輩のこと忘れろって言ってたよね? 秋田君オススメしてたよね?」
「言ったよ。オススメしたよ。でもそれは、秋田君を、だよ。パルじゃない」
「同じ人じゃん」

あたしはなぜか苛立ち始めていた。

何に苛立っているのか、自分でわからないのに苛立っていた。

奈々の言葉を、素直に受け入れられなかった。

奈々の言葉が、鉛の雨粒のように降りそそぐ。