そうだった。
桐野は陸上で良い成績残してたのに、事故で脚をやってしまって、引退したんだ。

ちょうど先輩の頃と時期が重なってて、周囲からは生きてたんだから良かったじゃない、ってよく言われてて、辛そうだったの憶えてる。

「……そっか、そうだったね。なんかごめん」
「ああもう。みんなでそうなるから困んだよな。もう傷はすっかり治ってるし、記録に挑戦できないだけで普通に走れるし」
「ならいいけど、あの頃いつも高崎先輩と比べられて荒れてたじゃん」
「ああ……そんなこともあったよな。でも一年経ってだんだんわかったんだよ。やっぱりオレは生きてるぶん良かったって……、あ、っと、ごめん」
「あ、ううん! いいのいいの。ホント元気になったみたいで良かった」

胸の中の痛いとこ、変に気を遣われると困るのは同じだね……
二人して話したいことにNGワードが引っかかって謝りあって、変な空気だ。