*想side*

苦しい呼吸、虚ろな視界がクリアになっていく。
薬が効いたのか、目の前の見知った顔にホッとした。

斗真さんーー。

相沢くん。


知ってる後ろ姿に、私は言葉にしていた。


「ありがとう、佐伯くんっ」

そして、笑いかけていた。

佐伯くんは、不思議な人だ。
第一印象の、怖い人から
塗りかえられたのは、優しい人。

こんな名前を借りて、自分の身を守ろうとした女を助けてくれた佐伯くんはーー


1人の大切な人の中に、入ってる。

「また、明日会いに来るから」

そんな、口約束に舞い上がる私は変かな。
だけどーー、早く明日になればいい、なんて思ってしまう。


「なんだか妬けるわその顔っ」

「えっ!!何がですか?」
斗真さんの意味不明な発言に、首を傾げた。

「まあ、いいや。
そろそろ夕飯だな。コンビニ行って来るから」

ニヤリ、と意地悪な笑顔に、赤くなる頰はきっと風邪のせい。

「いってらっしゃい」


もう、寂しくないよ。

私は、1人じゃない。

*想side終わり*