「俺が留年するなら、お前もだろうが。
一人は嫌だ」

なんだそれ。

俺は、仁を睨んだ。
こいつさえ来なきゃ、想ちゃん独り占めできたのにーー。


「こんな暗い場所いんじゃねーよ。
想、油断すんなよ。
何されるかわかったもんじゃないんだからな」

想ちゃんが居た筈の場所が、空になる。
仁が、想ちゃんを胸におさめたからだ。

「佐伯くんっ。
私は大丈夫だよ。
そんなこと言わないでっ」

君がーーーー。


「想ーー?」

ほら、俺なんか庇うからーー不機嫌になったよ。

見るからに不機嫌な仁に、優越感。

「想ちゃんは、お前らとは違うんだよ。
純粋なの。
綺麗なの。
じゃあ、俺ら行くから行こう想ちゃん」

仁の胸の中にいる想ちゃんの体を引いて、胸におさめた。

「おいおい、どこ行くんだよ」

どこって。

「教室。
だって俺ら"同じクラス"だからっ」

ニヤリ、と笑ってやる。

グッ、と耐えた仁にニヤリ、とまた笑った。