「面白い奴だとは思ってるけど。口で言ってるほど本気で口説いてたわけじゃないからな」
釘をさすように言い、握っている手に力を込められた。
見上げたら、こっそりと頭頂にキスが落とされる。それだけで、体中が熱くなっていく。
やがて着いた彼の部屋は八畳一間で、あまりものが置いていなかった。
ベッドと棚がひとつずつあって、備え付けのクローゼット。あとはローテーブルの上にノートパソコン。テレビさえもない。
「シンプルですね」
「物が多いと管理しきれないからな」
たしかに、物があふれる私の家は、何があるのかも把握しきれていない。
話せば話すほど、阿賀野さんは、会社で見せてるちゃらんぽらんな姿とは違う面を見せてくれる。
「美麗」
抱きしめられて、キスをする。
こういうときってどうすればいいんだろう。
シャワーとか、浴びるものなのかな。でも、雨のようなキスを中断することなんてできる?
結局彼に任せるつもりで、目を閉じて力を抜く。
了承の意思を感じ取った彼は、私を抱き上げ、ゆっくりとベッドに落とした。
「美麗」
甘い声。髪を撫でる手。
こんな風に女性に優しく触れるひとなんだ。
これも、人前のときとは違う態度。人がいるときには、強引なくらいの強さで肩を抱いてくるのに。
「ひゃっ」
シャツの前をはだけられ、胸のふくらみを包まれた私は思わず変な声を出してしまった。
「感じやすいんだな、お前」
「……その。……初めてなので。すみません」
黙っているつもりだったけれど、やっぱり無理。
変に経験者ぶって失敗するより、最初から言っておいた方が失敗も多めに見てくれるでしょ?
なんて思って言ってみたけど、途端に阿賀野さんの動きが止まる。



