あり得ない男と、あり得ない結末


「お前は意外と積極的なんだな」

「知りませんでした?」

「ああ。……仕事してるだけじゃわかんねーこといっぱいあるな」

彼の世界は、私の持っている世界より広い。だけど重なってない部分はたしかにあるから、私が彼を驚かすことだってできないわけじゃない。

「食い終わったな。そろそろ行くか」

これからレイトショーでハリウッド映画を見る予定だ。
親には一応、飲み会だから泊まってくる、なんて言ってきたけど、デートなことくらいバレているだろう。
反対して見せた父だって、結局私の行動を制限することなどできないんだ。
だって私はもう二十四歳の大人で、本気になれば彼の手の中から抜け出すことなど、簡単なんだもの。

映画館はあまり混んでおらず、人はまばら。自分たちのいる列は誰もいないので、安心してリラックスできる。
息をのむ展開の続くスペクタクル映画は、最初はすごく夢中になってみていたけれど、中盤を過ぎると展開が読めてしまって、何となく惰性で見ている感じになった。

やがて終盤になって、映画の登場人物の恋愛が進展するシーンで、そっと手を握ってくる阿賀野さん。
肩に頭をのせてみたら、そっと唇が重ねられる。映画の内容を追うのは、このあたりから諦めた。

「……ん」

小さな吐息を混じらせたキス。
唇を舌で舐められて、自分が食べ物になったような気分になる。