俺は…はぁ、と溜息を吐く。

その仕草の1つ1つに、ビクビクと反応する。

本人は、毅然としてるつもりなんだろうけど、俺からしたら、そんなに怯えなくても、と思うわけだ。



別に取って食いやしないのに…。



「…わーかった。この書類だけ捌いたら帰る」


「でも…」


「でも?なんだ?」


「野々村さん、絶対に帰りませんよね?」



こいつはエスパーかよ。



「帰る」


「うそ」


「帰るって」


「ほんとに?」



なんなんだ、この新婚ほやほやカップルみたいなやり取りは。



手にしているのは、あとちょっとで出来上がる明日の本会議の資料。

これさえ出来てしまえば、後は持ち帰ればいい。

俺は、一、二回瞬きをしてから、にやりと彼女の方を見やった。