いや、大丈夫。
 見た目はもうどっからどう見てもiPh●neではない代物なのだ。
 名前さえ変えてしまえばこっちの物だ。
 我ながら単純思考だけど、ヤッタ! この裁判、勝ったぞ!

「ちょっと提案なんだけど」

「提案でございますか? お聞かせ願えますか?」

 相手はあくまで敬語を通すつもりの様だが、自分の持ち物に敬語で返すのもアホらしい。
 もうこの際、タメ口でいいか。良いよね? 怒んないよね?
 一応、アタシのiPh●neだったらしいし、ピンチのアタシを助けてくれた命の恩人だ。
 危害を加えようとしてくるわけでもない。むしろ、丁寧に受け答えをしてくれる。
 悪い人には見えない。信用してよさそうだ。
 もし襲い掛かってきたら、急所でも蹴って戦闘不能にしてから逃げればいい。
 よし、それで行こう。

「その名前、変えない?」

「それは……つまり私の名前をiPh●ne 4sから変更すると言う事でしょうか?」

 この場にニックネームを変えてくれる姓名判断師はいないけど、独断と偏見で実力行使しようと思う。

「うん、そう言う事。アタシ、貴方を作った会社と裁判したくないからさ」

 ふむ、と顎に手をやって考え込むような仕草をする。
 悩んでるのかな? そうだよね、貴方のアイデンティティーだもんね……。
 アタシもいきなり名前変えろ、とか言われたら悩むわ。
 かと思っていれば、妙に納得した様な表情でこっちを見て頷いた。

「了承いたしました。私はマスターの意志に従います」

 即断即決、ありがとうございます。
 融通が利く携帯端末機で助かります。