さっき死んだと言いましたが……ごめん、あれは嘘です。
 アタシ、生きてました。しかもご覧ください、無傷です。


 地面に着地、と言うか着弾しました。
 メキメキ、バキバキと聞くに堪えない木々を次々と粉砕していく音の直後、ズドォオオンと凄まじい爆音を立ててアタシ達、と言うかイケメンさんが地面に着地した。
 濃霧の如く、土埃が濛々と立ち込めている。一寸先も見えないとは、まさにこのことだ。
 これは酷い……いや、煙い。口元を抑えてゲホゲホと咳き込みながら片手で土埃を仰ぐ。

「着地に成功致しました。お怪我はございませんか? マスター」

 壊れものでも扱うかのように、ゆっくり丁寧にアタシを地面に下すとイケメンさんは軽く会釈をしながらそう言った。

「わぁあああい! い、生きてるって素晴らしい!」

 助かるとは思っていなかった。だって、大空から落ちてきたんですよ?
 土埃があらかた収まるとアタシは背伸びをした。
 ついでに深呼吸もしてみる。スーハー、スー……。
 うん、息が出来ているから生きてる! 間違いないッ!
 ちょっと土の香りがするけど、新鮮な空気だ!

「マスター」

 背後から声がしたので振り返る。
 そうだ、生あることへの感謝と感動で忘れるところだった。
 アタシをジッと見つめて微動だにしないこの人物。
 隕石でも落ちたのかと思わずにはいられない、立派で派手なクレーターで地面を抉ったと言うのに、何事も無かったかのように立っている。