てか、『マスター』って何だよ? 
 あれか? なりたいなぁ~、ならなくちゃ! の何とかマスターの事? 
 151匹ですら曖昧だからなぁ……残念だが、アタシにはなれそうに無い。
はたまた、「問おう。あなたが私のマスターか?」から始まる願いをなんでも叶えてくれる黄金の盃争奪戦かな? クラスは何かな? ぱっと見アサシンっぽいけど……って違うな。


 そんな事を考えながら、渋い顔でイケメンさんの鼻辺りをガン見していた。
 すると、いきなり腕を掴まれた。
 ガシッと。絶対にこの手を離さない! みたいな強い力でです、ハイ。
 ちょっと痛いです、勘弁してください。失礼な事考えてすいません。

「失礼致します」

 アタシの事はお構い無しで、イケメンさんはグイッっと自分の方にアタシを引き寄せると空中だというのに器用に抱きかかえた。
 マジか……コレが巷で噂のお姫様抱っこ。
 この状況じゃなければ絶対、胸キュンしてた。

「マスター、しっかりお掴まり下さい。地表まで、あと20秒を切りました」

「はい?」

 地面に激突まで20秒だと? 唐突過ぎて笑えない。
 後3分は待って欲しいんですけど。


 しっかり掴まれって、どこに? やっぱベタに首周りかな?
 慌てて、首にしがみ付く。何でも良いけど恥ずかしいなこの格好。
 てか、こんなんで助かるの? 
 あ、それともあれですか?
 ボッチで死ぬのは嫌だから一緒にロマンチックに逝きましょうって事?  
 何それ、嫌だ。

「10秒を切りました。カウントダウンを開始致します。5、4、3、2、……」

 ロケット打ち上げかッ! 落下してるのにッ!! と心の中でツッコミを入れた。
 それとほぼ同時に、

「1……着地致します。衝撃に……」

 お気をつけください。と言うイケメンさんの声を身体を上下左右に大きく揺らす衝撃と、地表に群生していたのであろう大樹に衝突する音が遮った。


 ごめんね。お父さん、お母さん。アタシ、死んじゃった……。