アタシの叫びに誰かが応えた。
 声のした方を風圧に耐えながら首を動かして見てみる。
 空の上に誰かいる……だと? まさか、神様か!

「てッ……うわぁッ! 顔! 顔、近ッ!」

 結構至近距離にイケメンの度アップがあった。
 風になびく黒髪にこちらをジッと見つめる青い双眸。
 美白でもしてるのかってくらいに白い肌。
 この無表情がデフォルトです。って感じの澄ましたお顔。
 うーん、神様じゃなさそう。


 あれ? さっきまでこんな人いたっけかな?
 てか、待って、待ってー。
 よく見なくても、この人もノーパラシュートじゃないですかッ!


 なのに、何でそんな冷静な顔してるの? 馬鹿なの? 何なの? 死ぬの? 
 こっちまでつられて冷静になっちゃう。
 いや、ここで変に冷静になっても、『このままだと、どの道死ぬ――』って言う現実をより明確に理解しちゃう。
 よ、よし。少しでも不安を和らげるためにもう一回、現実逃避しよう。
 とりあえず、今一番疑問な事を隣の男に投げかけてみようか。

「……えっと。あの、どちら様ですか?」

 誰だ、この人。
 マジで身に覚えのない、知らない人なんだよなぁ。