「何もされてないか?」



体を少し離し、覗き込むようにあたしを見る。



「だい……じょうぶ……」


「良かった……」



安堵にあふれたその声。


……そうだよ。


あたしの知ってる煌くんは、こういう人だった。


過去のことがどうとか。そんなの関係ないの。


あたしは、今の煌くんを好きになったんだから……。



「ひとまず、ここを出よう」



煌くんに支えられるようにして外に出ると、そこには車が止まっていて煌くんがあたしを中へ促す。



「俺は煌のバイクに乗って帰るから」


「ああ。頼む」



帝って初めて聞く名前だけど、鳳凰の人なのかな。


車に乗る前にチラリと彼の姿を視界に入れると、メットをかぶっていてその顔はわからなかった。