そんな風に南里くんが思っていてくれたなんて、夢にも思わなかったから。


掛ける言葉さえ見つからない自分がもどかしい。



「なーんて。忘れてくれていいから」



すると、あれだけ真剣に訴えていたことをすべて消して。


なにかのスイッチが入ったかのように、パッと表情を明るく変えた。



「困らせてごめんな」



そして、あたしの頭をクシャクシャっと撫でた。


それがとっても優しくて、でも瞳はなんだか少し寂しそうに見えて。


……忘れるわけないじゃん。


そんな真剣に想いを伝えてくれたこと。


忘れ、ないよ。


心の中で繰り返す。



「着替えて。廊下で待ってる」



そう言うと、南里くんは静かにカーテンを閉めた。