……ああ、なんだかすごく行きたくなくなっちゃった。
さっきまで、早く煌くんに会いたいなんて思っていたのに。
それから2、3分置いてからこの部屋を出て、あたしはあやめの扉をノックした。
──コンコン。
「ご、ごめんなさい。ちょっと、トイレに寄ってて」
何もなかった風を装い、いつものようにあやめに入った。
トイレ、なんて色気なかったかなと言った後に思ったけど、その時は考えてる余裕がなかったんだ。
ほんとに、ここへ来る前トイレに寄って来たから。
「遅くなったら心配するって言っただだろ?」
いつもと変わらない煌くん。
その口調には、ほんとに心配そうな気配が感じられるけど。
『女なんて誰でもいいんだよ』
間違いなく煌くんの口から出た言葉だった。
この目で見て、この耳ではっきり聞いてしまった。



