「ごめんねっ、先に行ってて!」
千春ちゃんにそう告げ教科書などを取りに行くために慌てて教室に飛び込むと、そこには如月さんがひとり取り残されていた。
「あの、どうしたの……?」
声を掛けると彼女は不安そうな目であたしを見る。
「次、視聴覚室に移動ですよ……?」
少しドキドキしながら声を掛けると、すがるように口を開いた。
「そうなの?あたし知らなくて……。それに、視聴覚室の場所も分からないし……」
「じゃあ、一緒に行こう?」
あれだけ人が寄ってたかっていたのに、肝心なことは誰も教えてあげなかったのかな。
群がるだけ群がっといて、誰も連れて行ってあげないなんて、冷たいなぁ。
「ありがとう」
如月さんは優しくフワッと笑う。
わぁぁ、なんて可愛いんだろう。
あたしが恋に落ちちゃいそうだよ。



