「逸人さん」
と芽以がその腕を半泣きでつかむと、

「待ったーっ」
と早くから焚き火にあぶられていたせいで、汗まみれになっている圭太が立ち上がった。

「そこまでにしとけよっ。
 俺の目の前で、じゃあ、今日からまた頑張って作ろうとか言い出したら、今すぐお前を炎の中に突っ込むぞっ」
と逸人に向かって圭太が叫ぶと、立ち上がった逸人が無言で圭太の後ろ頭に手をやり、その炎の中に突っ込もうとした。

「待て待て待てーっ。
 自分が焚いた火であぶり殺されるとか、莫迦みたいだろっ!」

 うーん。
 口で脅すだけの圭太。

 無言で実行に移す逸人。

 この戦い、最初から勝敗は決まっているな、と芽以は思う。

 その後も二人は揉めていた。

 というか、圭太が一方的にぎゃあぎゃあ言っていて、逸人が、たまに、どすっ、と心に突き刺さる一言を放っていただけだが。