湿気の酷い梅雨が明ければ噎せ返るような暑い夏で、テストが終われば夏休みは目前。

当然私を含め、生徒は皆ソワソワしている。

私は今の所特に夏休みの予定なるものはないのだけれど。

とりあえずは、テスト期間故に彼に会わないと宣言していたので、久々に会いに行こうかなとぼんやり考えていた。

断られてしまえばそれまでになってしまうが。


「いーのりっ!」


そんな事を考えていた所にヒョコッと視界に入ってくるのは千代。

突然だった為に一瞬ビクッとしつつ、それでも笑顔を向けた。千代もまた笑顔だ。


「どうしたの?千代」


勿体ぶるかのように間を開けた後、今度は我慢できなくったように笑顔を更に緩ませた。


「えへへー。あのね、花火しない?」

「花火?」


季節的にはまだ少し早いような気もするのだが。店に今売っていただろうか。と記憶を探す。

だが、店に売っている花火を買ってするわけではないらしい。


「うん!神楽ね、花火職人の人と仲良くてね、毎年沢山の花火もらってくるの」


だから花火!とウキウキした様子で提案してきた。どうやらこう言うことらしいのだ。