私の左手首をギュッと掴み、お母さんがこちらに視線を向けている。


視界に映るお母さんの目は、なにかに怯えるような色があった。


「……梨沙、ひとりで始発の電車に乗るの?」


「え? いや、ひとりじゃないよ。クラスの子と一緒に……」


「恭平くんも一緒に連れていきなさい」


突然そんなことを言いだすお母さん。


久保さんも一緒に、隣街まで連れていく?


「久保さんは関係ないでしょ? それに、久保さんは仕事があるかもしれないし……」


「お母さんはね、梨沙が心配なの。恭平くんを連れていけば安心だろうから」