「私が窓を開けるのを待ってないで、ぶち破って入ってくれば良かったのに……いや、良くないけど」

「最弱種族の住処……部屋とは、そこに住まう主が許可しなければ、外の者は入れんのだろう? 許可を得たい場合は、扉をノックせよと教えられた」

「あれ、ノックだったの!? ドラゴンなのに、人間のマナーを良く知ってますな」

「父上が、我に教えてくださったのだ」

「マジかよ。お父さん、マジ常識人!」

 ドラゴンに、人間らしい常識とマナーの概念があることに驚きが隠せない。
 私の中のドラゴン像とは、凶暴で手が付けられない。
 己の欲望のままに行動し、気に入らなければ何でも壊す。
 そんな傍若無人なイメージが強かった。
 どやらそれは、その凶悪な見た目から人が勝手に連想した固定概念だったらしい。
 こうなってくると、エヴィエニスの裏設定がどうなっているのか、少し興味が出てきた。
 夢小説展開とか、もうどうでもいいや。今はただ純粋に彼の裏設定が知りたい。