【メールの差出人】


「おはよう」


ポンっと肩を叩いて挨拶してきたのは片平洋子(かたひらようこ)。トレードマークのポニーテールが揺れている。


「ああ」


「あずっ__じゃなかった。雷人(らいと)、なんか機嫌悪くない?まぁ、気持ちが分からないでもないけど。雷人も【あれ】見たから学校に行くんでしょ?」


「まぁな」


言葉少なに歩き出す。


中3にしては175cmある俺__楠木雷人(くすのきらいと)の足幅に合わすように、後ろから洋子がついてくる。小学生までは洋子のほうが背が高かったのに、ここにきて一気に逆転した。


いつもなら、誰と誰が付き合ったやら別れたやら、頼んでもいないのに喋り倒す洋子も、今日ばかりはおとなしい。


それもそうだ。


安達みつる、鮎川沙奈江、一ノ瀬ミサと、クラスメイトが立て続けに死んだ。


生徒の精神状態を考え、ここ3日は学校は休みとなっていた。かといって派手に出歩くわけにもいかず、悶々とした日を過ごす。


特に俺たち3年1組の生徒は、リアルに目撃している。


死に様をこの目で見ているんだ。


「ねぇ、雷人」


遠慮がちな声に振り返る。


「やっぱり【あれ】って、ホントなのかな?偶然じゃなくて?」


「それは__」


できれば、不安がっている洋子を安心させてやりたいが、言葉が続かない。


代わりに、昨夜遅くに携帯に届いたメールを思い出していた。