「矢井田ミキ!」


「__はい」


名前を呼ばれた2人が、教室の中央に進み出る。


「2人のうち、どちらかが次に進む。いうなれば1回戦だな」


「1回戦?」


北野が戸惑った顔で、今井と矢井田の顔を交互に見やる。


「そうだ。勝ち残ったものが次に進める。いたって単純明快だろう?」


「でも、方法は?」


「それは2人で決めるんだな。ジャンケンでもくじ引きでもいい。要は、相手が返事をしなくなればいいわけだ。もちろん、殴り殺しても構わない」


「そんな__」


俺の隣にいる洋子が、力なく呟く。


もう放送室から名前を呼ばれることはない。それなら、今井の口さえ封じてしまえばいいのだが、頼みの小金沢も居ない。ましてや知念が人質に取られていて、迂闊に手を出せない状態だ。


このまま、始まったトーナメントを見守るしかないのか?


それは__もちろん次の対戦もあるわけで、残っているのは俺と洋子、そして知念の3人。


まさか、洋子と争うなんてこと?


「俺は、女を殴るなんてこと、できない」


北野義雄は、空手部だ。


その拳で女性を打(ぶ)つことは、武士道に反するのだろう。


「それじゃ北野、お前が死ぬんだな?」