【3分の1】


「あたしたち、助かったんだ、よね?」


自信なさげに周りに問いかける篠塚に、誰も答えることはなかった。


「4限目の授業を終わります」とだけ言い残し、今井がそそくさと教室を出て行ったからだ。


取り残された俺たちは、動けずにいた。


視線を落とすと、諸岡が卍のように倒れているのが見える。じんわりと血の海が広がっていくのも。


「雷人、とりあえず座ろう」


洋子が腕を引っ張るが、足が動かない。


もう少しだった。


諸岡の手に、指に、心に触れたんだ。


もう少しで掴み取り、その命を引き寄せることができたのに__。


「な、なによ?あたしのせいだって言うわけ?」


「お前が言い出しっぺだろ?」


「はぁー?あんただって入れたじゃん!」


篠塚と猪俣の言い争いが始まった。


「お前があんなこと勧めてこなかったら、俺は書いてない」


北野がそこに加勢する。


「うちらのせいにすんの、やめろよ!」


矢井田ミキがやり返す。


全員が諸岡に投票したはずなのに、仲間割れだ。


しかも、諸岡は生贄としての使命を果たした。


「でも、これで助かったんだからいいじゃない」


和田カレンがなんとか丸くおさめようとするが、小金沢が厳しい表情で言い放った。


「お前ら甘すぎる。あいつが俺たちを解放するわけないだろ」


それには俺も同感だった。