「彼氏と木山選手どっちが
かっこいい?」


ふふっ。。。


「どっちもいい」


「ダメだよ 2つ選んじゃ
好きは1つだけにしないと」


はるくんの言葉は胸をちくりとさせる
お母さんのことを言ってるのかな?


「うーん そーだね
彼氏が一番かな」
6歳相手に答えるのも気を使う。


ーーー6番バッター木山選手が
打席に立ちました
うん?またやってますね
この前の東北での試合の全打席で
やってましたから
何かのおまじないでしょーかーーー


そう 勇さんは今シーズン
バッターボックスに立つと
あることをすると私に言っていた。


ホームベースの周りをバットで
5回叩いてバットを肩に構える。


それは私に対しての
愛の言葉。


あ・い・し・て・る


思わずその光景を見て
赤面する私。


だが期待も虚しく
絶好の先制の得点チャンスに凡打。


「あーあ」
「ダメだったね」


きっと勇さんは
「くそっ!!!」って叫んでるだろうな。


テレビに夢中になっていると
「遅くなりましたすみません」
とはるくんのお父さんがお迎えに来た。


「あっ!パパ」
はるくんは遊んでいた積み木を投げて
お父さんに向かって走った。


その姿はやっぱり6歳児。


「新しい先生?」


「あっ!紹介遅れましたが
大野美結と申します
大切なお子様をお預かりします」


「こちらこそ
うちのマセガキだから
言うことを聞かなかったら
叩いたりして指導しても
文句言いませんから
本当に迷惑かけますね」


いえいえ
叩いたりしたら虐待ですから。。。


笑って返すだけにしていた。