「取られるかと思った」
ふと口にした勇さんの言葉。


「取られる?」


「そう 園長の甥っ子に」


「何故それを?」


「今日花火大会行くんだったんだろ?」


「うん?なんで知ってるの?」


「花火ってさ 雰囲気出るじゃん
もし告られてオッケーしたら
どーしようかと思ってた」


「はい?」


「女って弱ってたら
優しく手を差し伸べてくれる人に
弱いって」


「え?」


「協力してくれって頼んだら
嫌です!無理です!って
断った奴が電話してきやがった
美結取られちゃいますよ
好きなら早めに手を打たなきゃって」


「うん?もしかして美奈代?」


「そう」


「まったくぅーあいつ!!!」


だから今日だったんだ!
そういうこと?


スタメン落ち覚悟で
練習そっちのけで来たのは
そーいうことか。


「え?電話番号なんで知ってるんだろ?」


「オレが美結にかけた時
記録してたんじゃないの?
いつか何かあった時のために
いい友達だね」


「うん いつもあたしばかり
迷惑かけてる
恩返ししなきゃ」


「オレらが幸せになることが
恩返しじゃないの?」


「ううん ヤツは違う!
物で返さないと後が怖い」


「ふふふ」


「何笑ってんのよ」


「楽しい関係だなって」


そう言いながら勇さんが
私を抱きしめる手がお尻のあたりに
降りてきた。


「こらこら!」


その時
キュルル 勇さんのお腹が鳴る音が
聞こえてきた。


「あはは」


「お腹すいたね
あたし準備するから」
と勇さんから離れようとするが
「こっちも食べたい」
と囁かれ 勇さんは別の意味の
食事モードに突入。


耳元で囁かれると
熱くなる。


1ヶ月ぶりに勇さんを感じた。