エアコンにタイマーがかけてあったのか、付けっぱなしだったのか、外から帰ったばかりなのに、程よく部屋が暖まっていた。

 そして、カーテンが開いたままの窓際のデスクの上には、小さなスノードームがあった。

 中にはツリーとスノーマンが居る。

 可愛い。

 この部屋に逸人さんが置き忘れたんだろうかな、と思いながら、それを引っ繰り返し、戻してみた。

 愛らしいスノーマンと緑の木の上に雪が降り積もる。

「あれ? 雪……」

 窓の外。
 先程まで、チラチラとしか落ちていなかった雪が、はっきり目に見えるほどの大きさになっているのが見えた。

 芽衣はスノードームを手にしたまま、雪を見つめ、
「……メリークリスマス」
と誰にともなく呟き、ちょっと笑った。

 しかし、後から思えば、平穏だったのは、このクリスマスの夜までだった。

 いや、此処までの過程が平穏だったかどうかは、ともかくとして――。