逸人は夜道を歩きながら、
「冷えるな。
 さっきより、降ってきたようだ」
と傘を差すほどではないが、チラチラ降っている雪を見上げ、言ってきた。

 至って、冷静だ。

 先程、自分がなにをしたのかも記憶にないかのように。

 いやいや、なんなんですか、ほんとに……。

 私ひとりが動転していて、莫迦みたいではないですか。

 そんなことを考えながら、芽以は逸人のあとをついて帰った。

 まだ、逸人の唇が触れた感触の残る頬に手をやりたくなるのをこらえながら――。