いや……今でもすさまじく違和感があるんだが、と思っているうちに、おのれの部屋についた。

 逸人が振り返り、
「此処のもので、持ち出すものはないのか」
と訊いてくる。

「とりあえずはないです」
と言いはしたが、結婚するとなると、もうこの部屋のものは持っていけと言われそうだな、とは思っていた。

 それでなくとも、普段は使っていないのに、一部屋潰しているわけだから。

 いずれ、翔平の遊び場にでもなるだろう、と思いながら、ドアを開けた。

 何故か、前に居るのに、逸人が開けなかったからだ。

「……全然変わってないな」
と中に入り、呟く逸人に、

「そりゃそうですよ。
 大学出て、ちょっとしてから、家を出て、そのまんまですから」
と答える。

 逸人は、なにやら感慨深げに部屋の中を見回していた。