いや、あんた、どんだけパクチー嫌いなんだ、と思ったとき、千佳が窓の外のよそ様のビルを見て、あーあ、と言った。
「移動すんの、此処より大きなビルらしいけど。
嫌だなー、家引っ越すの。
今のまま、実家が楽だし。
結構みんな辞めるらしいよ、女の子は」
と言ってくる。
まあ、そうなるかなーと思いながら、芽以は水を飲む。
「新幹線か高速でなら、通えなくもないけど。
バリバリキャリア積もうって子以外は、やっぱりちょっとね。
完全移転するまで、あと二年あるらしいけど。
あっちの支社と合併したら、周りの人もずいぶん変わっちゃうだろうしなー」
そう社食を見回しながら、千佳は言う。
総務の課長が、スーツにカレーをこぼし、
「奥さんに叱られますよー」
と前に座っていた人事の女の子がおしぼりを取りに行きながら、笑っている。