ふたたび、甘いんだか辛いんだかよくわからない社食のカレーを食べ始めたとき、千佳が、
「あんた、今日、暇?
 暇なら、あんたんち行っていい?」
と言ってきた。

「いやー、それが今日から新居に荷物運ぶことになっててさ」
と言うと、

「うそーっ。
 結婚式はっ?」
と千佳が言ってくる。

 そうだ。
 結婚式は? とそのとき気づいた。

 包丁突きつけられて、血判状に拇印を……

 違うな。

 婚姻届にサインをさせられて、既に結婚した気になっていたが、気がつけば式も挙げていない。

「なによ。
 あんたも挙げない気?」
と千佳が睨んでくる。