そ、それは、我々も破談にするというお話ですかっ?

 昨日、俺なら、芽以を諦めないと言ってくれたではないですかっ、と思っていると、逸人は、
「いや、俺も日向子のことは言えないなと気がついたんだ。

 なにか無理やりお前と結婚しようとした感じだからな。
 いっそ、婚姻届を破り捨てて、やり直そうかと思うんだ」
と言ってきた。

 いや、まあ、無理やりと言えば、無理やりでしたが。

 私はてっきり、貴方は圭太と家のために私を引き取ったと思っていたので、そこはちょっと圭太たちとは違うのでは……と思いながら、芽以は逸人を見つめる。

 あの婚姻届を書き直したいと思っていたはずなのに、いざ、破り捨てると言われると不安になった。

 またこの人書いてくれるんだろうか、と思って。

 一瞬、なにか考えていた逸人だったが、すぐに二階へと上がっていく。

 なにしに行きましたっ?

 なにしに行きましたっ? 今っ、と芽以が皿を片付けながら、何度も階段の方を振り返っているうちに、逸人が下りて来た。

 婚姻届と、そして、小さな箱を手に。