「千佳、パクチー好き?」

 芽以が社食で唐突にそう訊くと、千佳は海老天うどんを食べる手を止め、
「喧嘩売ってんの?」
と言ってくる。

 ……喧嘩は売っていません。

 お嫌いなようだ。

 駄目な人はほんと駄目だもんな~、パクチー。

 やっぱり、あの匂いがなー、と芽以は思う。

 一般的には、カメムシのようだと言われるが。

 私は、香水のような匂いだな、と思うのだが。

 香水。

 嗅ぐにはいいが、食べ物として口に入れろと言われたら、非常に嫌だ。

 そして、口に入れたときの鼻に抜ける感じがいつまでも残り、もう見るだけで嫌になる。

 一時の流行りが消えたら、お店が立ち行かなくなるんじゃなかろうか、とまだオープンもしていないのに、芽以は気の早い心配をしていた。