「違うわよ。
 でも、居たらいいな、とは思ってた」
と言われ、ひっ、と身をすくめる。

「静と話してると、あー、駄目な男ねーと思って、圭太をより好きになれる気がするの」

 いや……そのわりに楽しそうなんですけど、と思いながら、結局、日向子の前に座った静の注文を取り、芽以は、すすすす、とその場を去った。

 厨房から、チラチラと日向子たちの方を窺っていると、
「どうした?」
と逸人が訊いてくる。

「いえ、ちょっとあそこが気になりまして」
と日向子たちを見ながら言うと、

「放っとけ」
と言いながら、逸人は日向子たちのテーブルの料理を出してきた。

 それをトレーにのせながら、
「あれ? そういえば、二人ともパクチー抜かなかったですね。
 また張り合ってるんですかね?」
と芽以が言うと、

「いいだろ。
 パクチー専門店なんだから。

 食べられなくて、さっさと帰ってくれれば、それでもいい」
と逸人は言ってくる。

 いや……だから、此処、パクチー専門店なんですよね、と思いながら、芽以は料理を運んだ。