この席での唯一の安らぎは美味しい料理と、追加の野菜を届けて帰る途中だったらしい神田川が、外を通ったとき、たまたま目が合い、

『芽以さん、頑張って』
と視線で励ましてくれたことだ。

 ありがとう、神田川さん。
 どっしりとしてヒゲ面の神田川は、なんとなくマスコットっぽくって和む。

 ちなみに逸人は、かぼちゃのポタージュに入っていたパクチーに釘づけだった。

 食事中に圭太のスマホが鳴り、圭太が立ち上がる。

 職場からの電話のようだった。

「落ち着かんな」
と逸人の父、光彦が溜息をついた。

「いちいち上に指示を仰ぐなと言っておけ」
と廊下に出て話している圭太には聞こえていないだろうに、そんなことを言っている。

 次期社長を小間使いのように使うなと言いたいようだが、それを聞いていた逸人が言った。

「ああして、呼ばれるうちが花だろうが。
 社長は当てにならないと、社長、これどうでしょう、と問うこともなく、部下が自分たちだけで進め出したら、やばいだろうが」

 光彦がぎくりとした顔をしていた。