日向子は、彼女も小さな頃からよく訪れていたのだろう、相馬《そうま》の家の廊下の天井を見上げながら急に語り出した。
「あんたと私、どっちも圭太たちと小さな頃から一緒に居たのに。
会ったことなかったのは、圭太があんたにメロメロなところに出くわさないよう、圭太の両親が仕向けていたからなんでしょうね。
私が圭太を気に入っているのを知っていたから、うちの家と揉めないように」
いつか甘城《あまぎ》の家が、圭太が社長となるときの後ろ盾となってくれるように。
「そうか。
そういう親心だったんですねー」
「大きくなってからは、親に言われて、圭太がそのようにしてたんだと思うわ。
そういうとこ、圭太もちょっと卑怯よね」
と言う日向子に、
「そうですか?」
と言うと、
「……卑怯だと思いたいの。
少し、圭太から離れてみようかと思って。
今、圭太の嫌なところを探してるの」
と日向子は言う。