「でも、なんか賞とかとってんじゃないの?」

「そうだけど。
 自分の絵を売って、食べてけるわけでもないから」

「あら、意外とまともなこと言うのね」

 二人のやりとりを聞きながら、

 ……なんか意外にしっくりくるな、この二人、と眺めていると、いきなり、日向子が溜息をついたあとで、椅子に背を預け、言い出した。

「いろんな男の人が居るのよね、世の中。
 私、今まで、圭太しか目に入ってなかったわ。

 子どもの頃から、近くに居すぎたからね。
 家のためにも、圭太と結婚するのがいいって、ずっと言われてきてたし」

 あのー、圭太と一緒に、逸人さんもずっと居たと思うのですが。

 こんな格好いい人が何故、目に入らなかったんでしょう、と思っていると、察したように、日向子がこちらを向いて、

「なによ。
 じゃあ、私が逸人を選んでもよかったの?

 結婚しちゃってもよかったの?」
と言い出した。

 待て、俺の意思は? という顔で、逸人が日向子を見る。