パクチーの王様


 開店前に、ニンニクの匂いを消すのに、緑茶飲んで、リンゴを食べなければっ、と思いながら。

 だが、匂いの方向性が違うせいか。
 単に、鼻が記憶していて、匂いが蘇ってくるのか。

 まだ、芽以の鼻には微かにパクチーの匂いが残っていた。

 そこで、逸人が厨房に戻る。

 生パクチーがのった美味しそうなピザが木製トレーに載ってやってきた。

 この美味しそうな、は、もちろんパクチーにかかってはいないが。

 パクチーの美しい緑が、ピザを美味しく見せているのは確かだった。

 ……生パクチー。

 ごくり、と芽以は唾を飲み込む。