「今育ててる奴と並べて育てろ。
 パクチー発芽率悪いしな」
と言う逸人に、はいっ、ありがとうございますっ、と言うと、

「……それだと一週間程度でもう食べられるから」
と言ってくる。

 まさか、朝言ったお話がありますが気になって、早くパクチー育てて食べて、パクチー好きになるように、苗を持ってきたのだろうか。

 まあ、貴方にとっては、たいした話ではないと思いますけどね、と思いながらも、ありがたくいただいた。

 その日から、芽以はパクチーとともに寝起きした。

 幸い、パクチーはそこにあるだけなら、強い匂いを発したりはしないので、
「おはよう。
 パー、クー、チー」
と名付けた三つの苗と、

「おはよう。
 種たち」
とまだ芽が出ていない土に向かい話しかける。

 パクチーの種は硬い殻のようなものに包まれているので、少し割ったほうがいいと聞いて、割って植えてみたのだが、なかなか発芽しない。