家の中で、翔平を遊んでやっていると、夕方から出張するという兄が水澄に電話をかけてきた。

 自宅に荷物を取りに帰ってきたらしい。

 今、こっちに居ると水澄が言うと、すぐに聖はやってきた。

「どうした、芽以。
 渋い顔をして」
と言ってくる。

「いや……実は、昨日、区役所に行ったら、逸人さん、まだ、婚姻届出してなかったみたいで」
と言うと、聖は、

「なんだ、お前知らなかったのか」
と言ってきた。

 えっ? と兄を見上げると、

「いや、逸人は、お前が本当に自分とこの先暮らしていっていいと覚悟を決めるまでは、婚姻届は出さないと言ってたからな」

 此処に挨拶に来て、足湯に入ったとき、と言ってくる。

 そ、そうか。
 それでか、と芽以はようやく気がついた。