次の日の休憩時間、借りていたタッパーを実家に返しに行く、という名目で、芽以は店を出た。

 天気もいいし、ちょっと気分転換したかったのだ。

 逸人も、
「行ってこい。
 お義母さんたちによろしくな」
と言ってくれた。

 いい旦那様だ。

 ……そう。
 いい旦那さまなんだよあ、と思いながら、ぐだぐだ考えているのが莫迦らしくなってくるような青空を芽以は見上げる。

 芽以が実家に着いたとき、ちょうど幼稚園のバスも着いたので、水澄《みすみ》と翔平と一緒に先生やお友だちに手を振った。

 ああ、平和だなーと思う芽以に、翔平が、
「芽以、抱っこ抱っこっ」
とせがんでくる。

 はいはい、と抱っこした翔平のほっぺたに、ほっぺたがぶつかると、ぷっくりしたその頬はひんやりしていた。

「寒かったねー、翔平。
 お外でも遊んだのー?」

「遊んだー」

 無邪気に今日なにをしたか語ってくる翔平は芽以が通っていた幼稚園に通っている。