ああ、でも、妄想の衝撃が強すぎて、今、日向子さんが来たら、殴ってしまいそうだ、と思いつつ、芽以は皿を食洗機に詰めていた。

 チラ、と逸人を見ると、チラ、と逸人もこちらを見ている。

 何故っ?
 逸人さんっ。

 やはり、なにか、やましいことがっ!?

 などと思いながら、閉店時間を迎える。

 すると、一緒に皿を片付けながら、彬光が笑顔で言ってきた。

「今日、芽以さん、後半、仕事早かったですねー。
 機械みたいに」

 それは、心を無にし、オーダーを取って、カメムシを運ぶマシンと化していたからです。

 どよんとした考えばかりが巡るうえに、鼻先を刺激してくるカメムシ臭。

「……悟りが開けそうでした」
と呟き、芽以は、その日の仕事を終えた。