逸人さんが自分が出しておくって言ってたはずなのにっ、と動転したまま、役所を出た芽以は、外の自動販売機のところで待っていてくれた千佳の手を握り、

「まさか……、結婚詐欺っ?」
と叫んで、

「なにがっ!?」
と言われてしまったのだが。

 いやまあ、一緒に店をやっているこの状況で、結婚詐欺もないもんだが……。

 でも、とチラと逸人を見る。

 でもやっぱり、逸人さんは、圭太に私を押し付けられただけだから、いつか別れようと思って、婚姻届を出してないとか?

 だって、私には過ぎた夫だし。

 ああ、なんか頭の中がぐるぐるしてきた。

 妄想の中では、何故か、日向子そっくりな美女が逸人に寄り添い、
『よかったーっ。
 逸人さん、あの女とは婚姻届出してなかったのね。

 逸人さんの戸籍が汚《けが》されなくてよかったわーっ』
 などと言って、高笑いをしていた。

 ひ、日向子さん、すみません……。