会社なら俺がなんとかしてやったのに。

 お前は所詮、芽以より、会社の方が大事だったのか?

 後ろにあった木の丸椅子に腰掛け、腕組みをして、棚の上のスマホを見上げる。

 だいたい、お前は何事にも覚悟が足らないんだよ。

 そう思いながら、立ち上がった逸人はスマホを手にとり、滅多にこちらからかけることのない番号に電話した。

 なにか警戒した風に、
『……もしもし?』
と芽以が出る。

 圭太はもうこいつに、俺と結婚しろと言ったのかな、と思いながら、
「さっき、圭太から電話があって、お前と結婚しろと言ってきたぞ」
と逸人は言った。