ひたすら、うろたえ続ける圭太に、逸人は溜息をついて言った。
「何故、俺がお前の尻拭いを。
結婚できるあてもないのに、芽以を何年も待たせてたのはお前だろ」
こんな未来が来ること、初めからわかっていたはずなのに。
子どもの頃から、圭太の未来は決まっていた。
それでも、圭太は、自分の人生に芽以以外の女は居ない、くらいの勢いで、芽以に惹かれていったようだったが――。
「わかった、わかった。
芽以が承知したらな」
と適当なことを言って、切る。
スマホを棚の上に置いたあと、鮮やかな緑のパクチーを見た。
そして、自分の店になってから、まだ誰も座ったことのない店内のテーブルと椅子を見、切ったばかりのスマホを見た。
……圭太。
何故、芽以を連れて逃げない。